当サイトは法人向けの特殊ネジの技術相談・見積サイトです

特殊ネジ、特殊ボルトなど
特殊締結部品を試作1個から量産まで。
掲載がない特殊ネジもご相談ください。

Produces by 有限会社新井商店
027-323-3354
営業時間 AM8:30~PM5:30(平日)
コラム
2025.02.14

ネジ・ボルトの選び方!ロック加工の種類と特徴を徹底解説

機械製品や構造物において、ネジやボルトは重要な締結部品です。
しかし、振動や温度変化によってゆるみが生じると、製品の故障や重大な事故につながることもあります。そこで必要になるのが「ロック加工」です。

本記事では、ネジ・ボルトのゆるみ対策に欠かせないロック加工の種類や特徴、選び方について解説します。適切なロック加工を施すことで、製品の安全性と耐久性を大幅に向上させることができるでしょう。

ロック加工とは?ネジ・ボルトのゆるみ対策の基本を押さえよう

ロック加工とは、ネジやボルトが意図せずにゆるむことを防止するための技術です。
機械や構造物は使用中に常に振動や衝撃、温度変化などの外部要因にさらされています。
これらの要因によって、締め付けられたネジやボルトが徐々にゆるんでいくことがあります。
ネジやボルトがゆるむメカニズムは主に以下の原因によるものです。

振動によるゆるみ

継続的な振動により、ネジ山の間に微小な動きが生じ、徐々に回転力が発生してゆるみます。

熱膨張・収縮

温度変化によって材料が膨張・収縮を繰り返すと、締め付け力が低下することがあります。

塑性変形

過度な荷重がかかると、ネジやボルトの材質が永久変形し、締め付け力が失われます。

クリープ現象

長時間の荷重により、材料がゆっくりと変形していく現象です。

これらの問題に対処するため、様々なロック加工技術が開発されてきました。
ロック加工は大きく分けて「化学的ロック」と「機械的ロック」の2種類に分類され、それぞれに特徴があります。適切なロック加工を選択することで、ネジ・ボルトの緩みを効果的に防止し、製品の安全性と信頼性を向上させることができます。

代表的なロック加工の種類を比較:化学的ロックと機械的ロック

ロック加工は大きく分けて「化学的ロック」と「機械的ロック」の2つに分類されます。
それぞれの特徴と違いを理解し、用途に応じた適切な選択をすることが重要です。

化学的ロック:ねじロック剤のメリット・デメリット

化学的ロックは、特殊な接着剤やロック剤を使用してネジやボルトの緩みを防止する方法です。
最も一般的なのが「嫌気性接着剤」と呼ばれるねじロック剤です。

ねじロック剤の主なメリット

高い密封性:ネジ山の隙間を完全に埋めるため、気密性や防水性も同時に確保できます。
振動に強い:接着力によって振動によるゆるみを効果的に防止します。
簡単な施工:専用の工具が不要で、液体を塗布するだけで施工できます。
均一な力の分散:ネジ山全体に均等に力が分散されるため、応力集中を防ぎます。
サイズの制約がない:あらゆるサイズのネジやボルトに適用可能です。

ねじロック剤のデメリット

温度制限:高温環境では効果が低下する場合があります。
硬化時間が必要:完全な効果を発揮するまでに時間がかかります(通常12〜24時間)。
再使用が困難:分解後の再使用には、古い接着剤の除去と新たな塗布が必要です。
化学的適合性:使用する材料によっては相性が悪い場合があります。

ねじロック剤は強度によって「弱強度」「中強度」「高強度」に分類され、用途に応じて選択します。
メンテナンス頻度の高い部分には弱強度、振動の激しい部分には中強度、滅多に分解しない部分には高強度といった使い分けが一般的です。

機械的ロック:スプリングワッシャーや割ピンの役割

機械的ロックは、物理的な構造や部品を追加することでネジやボルトのゆるみを防止する方法です。

主な機械的ロック方式

スプリングワッシャー
弾性を持ったワッシャーで、常に張力を維持することでゆるみを防止します。施工が簡単で再利用も可能ですが、振動が激しい環境では効果が限定的な場合があります。

割ピン
ナットとボルトの穴に通して固定するピンです。完全な緩み止め効果があり、航空機や重要な機械部品によく使用されます。ただし、穴あけ加工が必要で、取り付け・取り外しに手間がかかります。

ダブルナット
二つのナットを使用し、互いに締め付けることで緩みを防止します。比較的高い荷重に耐えられますが、スペースを取り、重量が増加するデメリットがあります。

セレーションボルト
頭部や座面に歯状の凹凸があり、接触面に食い込むことで回転を防ぎます。薄い材料との接合に適していますが、接合面に傷がつくことがあります。

ロックナット
ナイロンなどの非金属インサートや特殊な形状を持つナットで、ゆるみに抵抗します。取り付けが簡単で再利用可能ですが、高温環境では使用できない場合があります。

機械的ロックの選択ポイントは、使用環境(振動の大きさ、温度など)、メンテナンス頻度、コスト、スペースの制約などを考慮して決定します。
高い安全性が求められる用途では、化学的ロックと機械的ロックを組み合わせることもあります。

用途別に選ぶ!ネジ・ボルトの材質・サイズの決め方

適切なネジ・ボルトとロック加工を選ぶためには、材質やサイズの選定も重要です。
用途や環境に応じた最適な選択をするためのポイントを解説します。

材質の選び方

鉄鋼系(炭素鋼、合金鋼)
最も一般的で経済的な選択肢です。適切な熱処理により強度を調整できますが、腐食に弱いため防錆処理が必要です。一般的な機械部品や構造物に適しています。

ステンレス鋼
耐食性に優れ、美観も良好です。強度は炭素鋼より劣りますが、食品機械、屋外設備、化学プラントなど腐食環境で使用される機器に最適です。

非鉄金属(真鍮、銅合金、アルミニウム)
導電性や非磁性が必要な場合や、軽量化が求められる場合に選ばれます。電子機器や特殊環境での使用に適しています。

樹脂(ナイロン、PEEK、PVC)
軽量で耐薬品性に優れ、絶縁性があります。電気絶縁が必要な場所や、金属が使えない環境で使用されます。ただし、強度や耐熱性は金属に劣ります。

サイズの決め方

直径(呼び径)
接合する部材の厚さや荷重条件から適切なサイズを選びます。一般に荷重が大きい場合は太いネジ・ボルトを選択します。

長さ
締結する材料の合計厚さに、ナットの厚さとネジの余長(ナットから出る部分)を加えた長さを基準にします。余長は一般的にネジ径の1〜1.5倍が目安です。

ピッチ
ネジ山の間隔を表します。細かいピッチは締め付け力が高く、振動に強い特性がありますが、組み立てに時間がかかります。

強度区分
ボルトの強度を表す指標で、数値が大きいほど強度が高くなります。一般的な機械部品では8.8級、高強度が必要な部分では10.9級以上を選択します。

使用環境別の選択ガイド

屋外・湿気の多い環境
ステンレス鋼や亜鉛メッキ処理された鋼製ネジ・ボルトを使用し、化学的ロック(中強度)または機械的ロック(ロックナット)を組み合わせます。

高温環境
耐熱鋼製のネジ・ボルトを使用し、高温対応のロック剤または機械的ロック(歯付きワッシャー、ダブルナット)を選択します。

振動の激しい環境(自動車エンジンなど)
高強度ボルト(10.9級以上)を使用し、中〜高強度のロック剤と機械的ロック(歯付きワッシャー)の併用が効果的です。

食品・医療機器
食品安全基準に適合したステンレス鋼製ネジ・ボルトを使用し、食品グレードのロック剤または機械的ロック(ロックナット)を選択します。

適切な材質とサイズの選定により、ネジ・ボルトの性能を最大限に引き出し、ロック加工の効果も高めることができます。

失敗しないためのロック加工の注意点とメンテナンス

ロック加工を施したネジ・ボルトを長期間効果的に使用するためには、適切な施工方法とメンテナンスが欠かせません。以下に注意点とメンテナンス方法を解説します。

ロック加工施工時の注意点

表面処理
接着系のロック剤を使用する場合、ネジ・ボルトの表面に油分や汚れがあると効果が低下します。施工前にアルコールや専用のクリーナーで脱脂処理を行いましょう。

適量の使用
ねじロック剤は使いすぎると余分な液が漏れ出し、周辺部品を汚染したり、硬化後に分解が困難になったりします。メーカー推奨の適量を守りましょう。

硬化時間の確保
化学的ロックは完全な効果を発揮するまでに硬化時間が必要です。通常は室温で24時間程度ですが、製品によって異なるため取扱説明書を確認しましょう。

温度条件の考慮
多くのロック剤は低温では硬化が遅く、極端な高温では効果が低下します。施工時と使用環境の温度条件を考慮した製品選びが重要です。

機械的ロックの適切な締め付け
スプリングワッシャーなどの機械的ロックは、適切なトルクで締め付けることが重要です。締め付け不足や過度の締め付けは効果を減少させます。

メンテナンス方法

定期点検
振動の激しい環境では3〜6ヶ月ごと、一般的な環境でも年に1回程度の点検を行い、ゆるみがないか確認しましょう。

トルクチェック
重要な締結部位は専用のトルクレンチを使ってトルク値を確認し、必要に応じて増し締めを行います。

再施工の判断
ゆるみが見られる場合や、分解・再組立てを行った場合は、ロック加工の再施工が必要です。特に化学的ロックは一度分解すると効果がなくなるため、新たに塗布し直す必要があります。

化学的ロックの除去方法
硬化したロック剤を除去するには、専用のリムーバーやヒーターを使用します。無理に除去しようとすると、ネジ山を傷める可能性があるので注意が必要です。

環境変化への対応
使用環境が当初の想定から変化した場合(温度上昇、振動増加など)は、より適したロック方式への変更を検討しましょう。

正しいメンテナンスを行うことで、ロック加工の効果を長期間維持し、機械や構造物の安全性と信頼性を確保することができます。高い安全性が求められる用途では、メンテナンスプログラムを文書化し、記録を残すことも重要です。

まとめ:最適なネジ・ボルト選びで安全性と耐久性を向上

ネジ・ボルトのロック加工は、機械や構造物の安全性と耐久性を大きく左右する重要な技術です。
本記事で解説したように、ロック加工には化学的ロックと機械的ロックの2種類があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。

適切なロック加工を選ぶためには、使用環境(振動、温度、湿度など)、必要な強度、メンテナンス頻度、コストなどを総合的に検討することが大切です。
また、ネジ・ボルト自体の材質やサイズの選定も、ロック加工の効果を最大化するために欠かせません。

さらに、ロック加工を施した後も定期的な点検とメンテナンスを行うことで、長期間にわたって安定した締結力を維持することができます。
特に重要な安全部品や高い信頼性が求められる部位では、複数のロック方式を組み合わせることも検討すべきでしょう。

最適なネジ・ボルトとロック加工の選択は、製品の故障予防、安全性向上、メンテナンスコスト削減につながります。
本記事の情報を参考に、用途に合ったネジ・ボルトのロック加工を選定し、より安全で信頼性の高い製品づくりに役立ててください。

特殊ネジ、ボルトの事ならネジラボ.COMにおまかせ!

有限会社新井商店が運営する「neji-lab.com」は特殊ネジ、ボルトの技術相談から製作まで請け負っています。特殊ネジ、特殊ボルトなど、特殊締結部品を試作1個から量産まで対応可能。
HPに掲載がない特殊ネジもご相談ください。

投稿者プロフィール

新井商店(neji-lab.com)
新井商店(neji-lab.com)
50余年に渡り培ってきた「ネジに関する知識や知恵」を提供していくことで、「安心・安全なものづくり環境」の実現に貢献してまいります。
お問合せ
027-323-3354営業時間 AM8:30~PM5:30(平日)